« 鳥(2) | トップページ | エリーゼの為に »

2007年2月 8日 (木)

鳥(3)


                3


     その日の午後の事だった。私が、そうして、
    その夢の事を考えていると、不意に、妻が、
    私に、「どうしたの?」と、尋ねたのだった。
    妻は、「何か考えているの?」と聞きながら、
    私の前で紅茶を入れ、私の顔を見つめた。
     私は、微笑んだ。そして、そう尋ねた妻に
    「夢を見たのさ。」と答えた。
    「夢?」と妻は聞き返した。
     私は、うなずいた。そして、今朝見たその
    遠い日の夢の事を妻に語った。すると、妻は、
    私の夢の話を聞き、何も言おうとしなく成っ
    たのだった。
     私は、妻のその沈黙の理由が分からなかっ
    た。

     妻は、私を見つめた。そして、何も言はな
    いまま、私の手を取った。そして、その手を
    ゆっくりと自分の前に運ぶと、自分の腹の上
    に置いた。
    「赤ちゃんが出来たのよ。」と妻は、言った。
    私は、何も言はなかった。そして、何も言は
    ないまま、妻の目を見た。
     部屋の中は、静まり返って居た。その静け
    さの中で、私は、小鳥が、自分のその手に、
    帰って来た事を知ったのだった。


 
             (終)

 平成19年2月8日(木)

    西岡昌紀 (にしおかまさのり)


---------------------------

この小説は、フィクションであり、実在する人物、
出来事とは関係有りません。(文中の「私」と
作者は全く無関係です。)
批評の為の引用、転載は自由ですが、その場合は、
仮名使ひを含めた一切の変更を、理由を問はず、
禁じます。批評の目的以外の引用、転載は固く
禁じます。

             西岡昌紀(作者)

http://blogs.yahoo.co.jp/nishiokamasanori/

« 鳥(2) | トップページ | エリーゼの為に »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/196869/5267668

この記事へのトラックバック一覧です: 鳥(3):

« 鳥(2) | トップページ | エリーゼの為に »